新しい洋服に、新しい漫画。一人でお茶して一人で帰る。
バスに揺られて最寄り駅まで。

「まったく。この時間電車の乗り換えタイミング悪いなっ!」

少し小走りで駅前ロータリーを突っ切った。
「意地でもあの時間乗りたい!」


キラキラ光る太陽が黒い影に遮られる。


「わっ!」

バサバサっと紙袋が散らばり、トンッ!とその場で尻餅をつく羽目に。

「いったぁ…」


こんなアホみたいなことって……


ハッとして辺りを見ると、先ほどの黒い影の正体、日傘がクルクル回っていた。
こんな暖かい日差しになんで日傘だよ!

紙袋を掴み、立ち上がり私と反対の向きで倒れていた人に近づいた。

「大丈夫ですか?すみません急いでたもので…」

「…うっ」


青ざめた顔で「かさ」と呟いたので、転がっていた日傘を手渡すと、スクッと立ち上がり、無言で立ち去ろうとする。

「えっ、えっ!」


いやいや、さすがに謝るとかなんかしなさいよ!

バイト先の生け簀かない先輩や、人の気持ちも考えない友達、あんまりにも他人に無関心な通行人。


なにもかもがこの一瞬でムカついた。

「ちょっと待ちなさいよ!」


彼はふわふわと癖のある髪を揺らし「はっ?」と不愉快そうに、眉を寄せて振り向いた。

「あなたは何様なの?さすがに謝るとかなんかしなさいよ!
そうやって意気がっていられるのもね、そのセーフク着れてるまでだからね
それに守ってもらってんの!わかる?」

彼はキョトンとしたと思ったら、ポツリと「なるほど、…」と制服の襟を摘まみ感心したように、見つめていた。


あれ?
なんか頬とか煤汚れてて気がつかなかったけど、この男の子色白でキレイな顔してる?


「あんた、変なの」

ふっと彼は笑ったと思うと、フラァッとそのまま後ろに倒れてしまった。