side・ハル







季節が巡る。

巡っていく。


時は止まってくれない。

ずっと同じ場所には、留まれない。


同じ季節であり続けることは、許されないのだから。



私の名前の一部が付いた季節が終わって。

暑い暑い夏がやってきて。


どんよりとした灰色の空が消えて、澄んだ空が広がっていく。



巡る季節。

流れる時間。


時間というものは残酷なもので、傷ばかりを私の心に刻み込む。





夏休みに入る直前。

あの紺野くんに、彼女が出来た。


私が知っている限りでは、初めてのことだった。



相手は、同じクラスの女の子。

私とは、全く違うタイプの女の子。


同じクラスの増渕さん。



笑顔がキラキラしていて、とても素敵な女の子。

気さくで、誰にでも気軽に話しかけられる子。


本当に、私とは真逆の女の子だった。



だって、私は迷ってしまうから。

他人に話しかけようとする前に、散々迷ってしまうから。


何を話すか。

どんな風に話しかけるか。


それだけで、頭がいっぱいいっぱいになってしまう。



とても、気軽になんて話しかけられない。

迷って迷って、ようやく言葉を口に出せる。


いい加減、そんな自分が嫌になるけれど。




分かっていた。


いつかは、こんな日が来るということ。

紺野くんに彼女が出来る、その日が訪れることを。



分かっていたけど、来て欲しくなかった。

そんな日なんて、来なければいいとさえ思っていた。


分かっていたんだよ。



紺野くんは、クラスの中でも目立つ。

真ん中にいて、笑っていて。

バカなこともたまに言うけれど、優しくて。


紺野くんを見ているのが私だけではないってこと、気付いてた。

そんなの、分かっていた。



こんなにすぐ、その時が訪れるなんて。

その相手が、こんなにも身近にいる人間だなんて。