自分で、自分に魔法をかけた。


もっと、強くなれる様に。

弱い自分なんて、いなくなってしまえばいいと。





さよなら。

さよなら。


泣いていた私は消えるんだ。



さよなら。

さよなら。


何も言えない自分は、今、この瞬間からいなくなる。

新しい自分に生まれ変わるんだから。



いじめられていた過去なんて、忘れてやる。

そんな過去はいらない。


真っさらな自分に生まれ変わる。

最初から、全てをやり直すんだ。



そうすれば、この恋も消える。

きっと忘れられる。


新しい自分に生まれ変われば、この切ない想いも忘れられる………。



さよならの言葉が、魔法になった。

この言葉が魔法になって、大人しいだけの私を変えてくれるんだって、信じていたの。


私は。



でもね、私は知ってしまった。

気付いてしまった。


そんな魔法なんて、この世にはないということを。

魔法をかけたつもりになっていただけで、私はちっとも変われてなんかいなかった。


さよならの魔法は、最初から存在すらしていなかったのだ。



あの頃の私は弱くて、1人では立てなかった。

何かに頼らなければ、生きていけなかった。


だから、その言葉にすがった。


魔法の言葉が、あればいい。

自分を変えてくれる魔法があればいいのにと願って、それを信じてしまったんだ。



他人に聞かせたら、笑われる様なこと。

バカにされても、おかしくない。


そんな言葉にすがらなければ、私はあの時、立ってすらいられなかった。

それくらい、病んでいたのだ。



でも、もう大丈夫。

きっと、大丈夫。


今の私には、あの魔法は必要ないよ。




過去は消えないんだ。

消したくても消えてはくれないし、記憶だってなくなることはない。


その証拠に、捨てたつもりになっていたのに、私は今でも覚えているじゃないか。


あの頃のことを。

あの恋を。