変な顔をされたらどうしようって、内心、ビクビクしていたんだ。
扉を開ける直前まで、私は怯えていた。
震える手で、あの扉を開けた。
でも、開けてみたら違っていた。
現実は、私が思っていた通りには進まなかったのだ。
みんなは、思いの外、笑顔で受け入れてくれた。
1年以上、教室に顔を出すことがなかった私のことを。
幽霊みたいに薄い存在だった、私のことを。
「だ、大丈夫!大丈夫だから………。それより、天宮さん、ほんとに久しぶりだね!!」
「うん、久しぶり………だね。」
「昔と全然違うから、一瞬、誰なのか分かんなかったよ。」
私にあのハガキを送ってくれた、クラス委員だった女の子。
西脇さん。
変わってしまった私にひどく驚いていたけれど、真っ先に私に笑顔を向けてくれた人。
「天宮さん、気にしなくていいんだよ。」
「え?」
「ああいうのって、物珍しくて騒ぎたいだけだからさ。」
「物珍しい………?」
「そう。」
他人の目を気にする私に、そう言ってくれた。
「乾杯しよー!」
「また!?今度は、何に乾杯するの?」
「んー、じゃあ、天宮さんがこっちに久しぶりに戻ってきたことに………かんぱーい!」
「はーい、かんぱーい!!」
それと、同じクラスだった女の子達。
同じクラスに通っていた時には話したことさえなかったのに、気さくに輪の中に入れてくれた。
自然に、私をその中に混ぜてくれた。
予想もしなかった人との触れ合いもあった。
「いや、さ………、天宮が来てるってみんなが言うから、ちょっと話がしたいなーと思って。」
「話って、私………と?」
松島くん。
磯崎さんと1番仲が良かった、同じクラスの男の子。
同じクラスの男子の中で最も苦手に思っていた彼が、思いもよらず、積極的に話を振ってきたのだ。
松島くんが、私に近付いた理由なんて分からない。
彼が何を思っているのかなんて、あの頃だって分からなかった。