さよならの魔法




幹事だからか。

出席の確認をしたいが為に、入口近くの席に座っているのだろう。


幹事というのも、なかなか大変だ。



「西脇、お疲れ様ー。」


俺がそう声をかければ、西脇は笑顔でこう返した。



「紺野くんこそ、来てくれてありがと!」

「いや、こっちこそ、ハガキ送ってくれてありがとな。結構、楽しみにしてたんだぜ。」

「わ、ほんと!?そう言ってくれると嬉しい。」

「ほんと、ほんと。………っいうか、俺、遅刻?」


軽く頭を下げてそう問えば、西脇は慌てて首を横に振る。



「ぜーんぜん!まだ始まったばかりだし、遅刻っていうより早い方だから。」

「そっか、それは良かった。」

「さ、紺野くん、座敷に上がって!」


耳通りのいい西脇の爽やかな声に押され、俺はスニーカーを脱ぎ、座敷に上がることにした。




座敷に上がれば、すぐに人に捕まる。

奥のテーブルに固まって座っているのは、5年前は毎日顔を合わせていた連中。


懐かしさに、頬も緩んでしまう。



「紺野じゃーん、久しぶり!」

「あ、お前、小下か。………うわ、お前、酒くせー!!」

「逃げんなよー、ユ・ウ・キ・くーん!」


既に出来上がっちゃってる男どもが、座敷の奥に数名。


多分、こいつらは1番乗りで、張り切って店に来たのだろう。

既に出来上がっているところを見ると、今の時点で相当アルコールが体内に入っているに違いない。


逃げるつもりもないから、あっさりと酒浸りの男どもに捕獲される。



「紺野ー、お前は何飲むー?」


早速、酒かよ。

飲ませる気かよ。


まあ、同窓会なんて、顔合わせを兼ねた飲み会みたいなものだ。



どうしようかな。

嫌いな酒って、そんなにないんだよな。


日本酒とか、焼酎なんかも好きだし。

渋くウィスキーなんかも、たまに背伸びして飲む。



成人式も終わって、晴れて大人の仲間入りをしたのだ。

酒を口にしても、咎める人はいない。