さよならの魔法




「乾杯しよー!」

「また!?今度は、何に乾杯するの?」

「んー、じゃあ、天宮さんがこっちに久しぶりに戻ってきたことに………かんぱーい!」

「はーい、かんぱーい!!」



周りに座る女の子達に合わせて、コツンとジョッキをぶつける。


お酒は、そんなに弱くない。

お父さんもお酒に強い方だから、私はきっとお父さんに似たのだろう。



それほど弱くはないとはいえ、ペースを上げて飲んでしまえば、どんなに強くても酔っ払ってしまうというもの。

2杯しか飲んではいなかったけれど、飲むペースが速かったせいで、既に私はほろ酔い気分だ。


飲むペースを速くしているのは、わざとだ。



だって、飲まなきゃ、やっていられない。

平然とした顔で、この場に留まってなんていられない。


今日ばかりは、お酒の力を借りてしまおう。

お酒の力をほんの少し借りて、この緊張を少しでも和らげてもらおう。



私はこの町を去る時、誰にも見送られることはなかった。

この町を去ることだって、必要最低限の人にしか伝えなかった。


どこから、情報が漏れ出たのか。

私が卒業後に引っ越していたことは、クラスメイトの間に広まっていたらしい。


そのことを、5年の時を経て、今日知る。



(頑張れ、私。)


逃げるな。

頑張れ。


お酒に頼らなければならないところが、臆病者の私らしいけれど。



それでも、何とか踏み留まってる。

頑張ってる。


千夏ちゃんがいるから。

千佳ちゃんがいるから。



私は、もう1人じゃない。

孤独なんかじゃないんだ。


私を励ましてくれる人がいるから、頑張れる。

私を待っていてくれる人がいるから、ここにいられるんだ。



「でもさー、天宮さんって、ほんと………何か変わったよね。」

「え?」


ふいに振られた話題に、私は慌てて横を向く。


そう言ったのは、クラスメイトだった女の子の1人。

中学時代には、話したことのない女の子だ。