さよならの魔法




こうして、誰か1人だけでも驚かせることが出来た。

頑張った甲斐があるというものだ。



昔とは違って見えるけれど、これも私の一部。

あの頃にはなかった、今の私の別の一面。


いつもよりも気合いが入ってしまったことは否定出来ないけれど、気を遣ったのも確かだけれど、今の自分を表現したつもりだ。


昔の面影はないかもしれない。

だが、今現在の自分と激しく違っているという訳ではない。


西脇さんの声に反応して、店内の視線が集中していくのが分かる。



「え、天宮さん?どれどれー!?」

「ほら、あそこに立ってる女の子。友ちゃんの隣にいる子だよ!」

「ミニスカートの子?」

「ねー、ちょっとどいてよ。見えないんだけど………。」


にわかに騒ぎ始める店内に、居心地の悪さを感じずにはいられなかった。



(変なのかな………、今の私って。)


似合っている自信はないけれど、それなりに見えていると思っていた。


騒がれるほど、変なのだろうか。

おかしく見えているのだろうか。



地味だった私が、メイクなんかして。

調子に乗って、ミニスカートなんか穿いてきて。


お洒落をして身を固めてくることは、そんなにいけないことだったのか。

いじめられていた私には、そんな権利すらなかったのか。


落ち込んでしまいそうになる寸前、救いの手を差し伸べるみたいに、西脇さんがこう囁いた。



「天宮さん、気にしなくていいんだよ。」

「え?」

「ああいうのって、物珍しくて騒ぎたいだけだからさ。」

「物珍しい………?」

「そう。」


物珍しいって、私のこと?



「天宮さんが可愛くなっていきなり現れたものだから、騒ぎたくてしょうがないだけなんだよ………バカみたいだよね。」


可愛くなって。

西脇さんのその言葉は、多少のお世辞が含まれているに違いない。


そうは分かっていても、私は嬉しかった。

嬉しいって、そう思った。