「好きだったの………っ、すごく。好きだったんだ、その人のこと………。」
大好きだった。
ほんとに好きだった。
視界に入れてもらえなくても。
同じ世界の中にいられなくても。
彼のことが好きだった。
とても好きだったの。
「………ひっ、うう………っ、いやぁ………」
好きだったと呟いたのが最後で、後はもう言葉になんてならなかった。
悲鳴に近い声を出して、私は泣いていた。
涙を止めようとは思わなかった。
そう思ったところで止まらないことを、自分でも分かっていたから。
千夏ちゃんと千佳ちゃんの前で涙を見せるのは、思えばこれが初めてだ。
2人といて悲しくなることなんて1度もなかったから、泣いたことなどなかったのだ。
こんなみっともないところを見せたら、嫌われてしまうかもしれない。
薄暗い闇に包まれた過去を知られたら、引かれてしまうかもしれない。
そう思ったから、私は過去を口にしなかった。
信用していても、わざわざ過去のことを言葉にして伝えようとはしてこなかった。
私の過去を知っても、2人は変わらなかった。
私が信じた人達は。
私が心を許した人達は、私を抱いたままでこう言った。
「ハル、つらいのに………つらかったのに、よく頑張ったね。」
「千夏………ちゃん………。」
「話してくれてありがとう………ハル。」
「千佳ちゃん………。」
2人はそう言って、一緒に泣いてくれた。
私と同じ気持ちになって、涙を流してくれた。
ああ、私は、この2人にどれだけ救われただろう。
この2人の存在に、どれだけ助けられたことだろう。
誰も知る人のいない、大きな街。
人との交わりが少ないとばかり思っていたこの都会の街に移り住んでから、何度も何度も、千夏ちゃんと千佳ちゃんに支えてもらっていた。
今の私がいるのは、お父さんの力だけじゃない。
私をここに連れてきてくれたお父さんと、この街で出会った2人のお陰だ。
