さよならの魔法




変わらない。

変えられない。


きっと、この先もずっと。

一生、この記憶は消えてくれないのかもしれない。



「もう、いいよ………ハル。」

「それ以上、言わなくていいから………。」


そう言われた次の瞬間、私の体は温かい何かに包まれていた。



優しく、優しく、柔らかい腕が私の体を抱き締める。


温かくて、気持ちいい。

そして、心地良い切なさに包まれる。



玄関の中。


座り込んでしまった私の体を、千夏ちゃんと
千佳ちゃんが抱き締める。

狭い空間の中で、3人がひしめき合う様にして重なっている。



もう言わなくてもいいと言われているのに、言葉が止まらなかった。

自分でも、止めることが出来なかった。


ずっと、誰かに聞いて欲しかったんだ。

私は、きっと。


何も答えてくれなくても、構わない。

ただ、私の言葉を聞いて欲しかったのだ。



「教室に行けなくなっちゃった………。会いたいのに、会えなくなって………とてもじゃないけど、合わせる顔なんてなくって。」


好きだという気持ちを、他人の前で暴かれて。

大切にしていた心を、容赦なく踏みにじられて。


あの状況で再び教室に顔を出せる度胸なんて、私にはなかったのだ。



だから、逃げた。

隠れた。


誰にも見つからない場所に隠れて、守られて。

私だけのオアシスを見つけて、作ってもらえて、私はようやく学校に行ける様になった。




最後に紺野くんの顔を見たのは、卒業式の日。

胸に赤い花を付けた学ラン姿の彼を見たのが、私の中での最後の記憶。


最後に会ったあの日も、紺野くんはあの子と一緒だった。

彼女の隣にいた。



その時、思ったんだ。



やっぱり、私じゃダメなんだ。

私なんかじゃ、ダメなんだって。


私なんかじゃ、紺野には釣り合わない。

紺野くんの隣には立てないって。



分かってた。


分かっていたのに、悲しかった。

分かりきっていたことだったのに、涙が出た。