さよならの魔法




恋を知ったから。

彼に、恋をしたから。


初めてだった。



自分ではない誰かを、愛おしく感じたのは。

自分ではない誰かを、強く想ったのは。


見ているだけでも良かった。

叶わなくても構わなかった。


例え、大好きな彼に、大切な人が出来ても。

彼が、私ではない女の子を選んでも。




あの日までは。




あの日。

14歳の時のバレンタインデー。


あの日、私の恋は終わった。

自分以外の人の手によって、終わらされてしまった。



終わらせるつもりだったの。

元々、叶わない恋であることは知っていた。


それでも、自分の手で終わらせたかったんだ。

自分の口で、彼に伝えたかった。


初めての恋だったから。



私の恋が終わった日の記憶。

心が壊れて、砕けたあの日のことを、私は今でも忘れられずにいる。


忘れたくても、忘れられなかった。

終わらせたかったのに、終わらせることが出来なかった。



「すごくすごく………好きな人がいたの。初めて、好きになった男の子。」


紺野くん。

大好きだった、優しい男の子。


目の前の2人が、ゴクンと息を飲む。



「ハル………。」

「告白しようとしたの。彼女がいたんだけど、どうしても好きな気持ちを消せなくて…………フラれるのを分かっていて、告白するつもりだった。」

「………。」

「でも、告白する前にバラされちゃった。同じクラスのみんなの前で、いじめてた子に先に言われちゃったの。」




ズキン。

ズキン、ズキン。


針で刺した様な痛みが、全身を襲う。



今、起きていることではないのに。

あれは、もう5年も前の出来事なのに。


昨日のことの様に思い出せる。


忘れられなかったのだ。

思い出すことなんて、簡単だったんだ。



魔法なんて、効いてなかった。


さよなら。

そう何回唱えても、あの日の記憶は消えてくれなかった。