さよならの魔法




隠したくて、隠している訳ではなかった。

話したくない過去であったから、話せなかっただけ。


2人を信用していなかったんじゃない。



千夏ちゃんと千佳ちゃんのことは、誰よりも信用してる。

私をこの大きな街まで連れてきてくれたお父さんと同じくらい、信じてるよ。


この心を開くのは、今だ。

ドアの鍵を開けるのなら、今しかない。



「………っ、聞いて………くれる?」


ゆっくりと、記憶を解いていく。

封じ込めていたものを、解放していく。


言葉に出そうとするだけで、胸は痛むけど。

思い出すだけで、涙が出るけれど。



それでも、話したい。

聞いてもらいたい。


今でなければ、私はきっと話せなくなる。

隠したくなる。


そう思うから。




本当の私は、強くなんかない。

強くなりたいと願うだけの、弱い心の持ち主だ。


本当の私は弱虫で、とても臆病だ。

意気地がなくて、勇気もなくて、怖がりだから。



今、話したい。


目を閉じて、扉を開ける。

言葉を選んで、慎重に話し始めた。










「昔、住んでた所ってね、ここよりもずっと田舎で………ちっちゃい町だったの。」


山に囲まれた、小さな町。

私を育んだ田舎町が、瞼の裏に浮かぶ。


私が生まれた町。

そして、お父さんとお母さんが生まれた町。


弥生が丘。



「小学生の頃から、私、地味で目立たなくて…………。だから、………いじめ………られてたんだ。」


大人しくて、いつも教室の端で縮こまっていた自分。

罵りの言葉に言い返すことすら出来ず、唇を噛んで我慢するしかなかった自分。


小さな頃から、それが当たり前だった。

当たり前のことだと思っていた。



「つらくなかったと言えば、嘘になるけど………それでも、我慢してた。我慢出来たの。」


友達なんかいなくても、耐えられたのは。

孤独感に苛まれても、それでも心を保っていられたのは。