さよならの魔法




磯崎さんとまた同じクラスになってから、全ての運命が変わってしまったのだ。

クラス替えがあったあの日から、私は苦難の道を歩かざる得なかった。


執拗ないじめに耐えていた、あの頃。

小さくなって、縮こまっていた私。


磯崎さんはそんな私を笑い、いつも歪んだ笑顔を私に見せ付けていた。



(いや、だ………、嫌だ………!)


嫌だ。

嫌だよ。


思い出したくない。

あの頃のことなんて、何も思い出したくない。



それなのに、私の脳は、勝手に記憶を再生させていく。


溢れ出すのは、封印していた記憶。

閉じ込めていた時間ばかり。




「また、一緒に本を読まない?」


初めて出来た、友達。

人見知りだった私に、声をかけてくれた人。


同じクラスの橋野さん。

私みたいに、大人しいと思っていた女の子。



「ユウキ!」


愛らしい声で、紺野くんの名前を呼ぶ増渕さん。


紺野くんに選ばれた人。

紺野くんの特別な存在になれた人。



痛い。

痛いの。


心臓が痛い。

ズキズキと痛み出して、止まらない。



傷は、決して消えてはくれない。

今でも、私の心にはくっきりと傷が深く刻み込まれている。


忘れたい。

忘れていたはずだったのに、忘れていたつもりになっていただけで、本当は全て覚えていたんだ。



捨てたはずの過去が、手のひらに戻ってくる。


手放したものが、この手の中に舞い戻る。




「天宮さんがねー、紺野くんにチョコレート、渡すみたいだよ!!」


密かに温めていた恋だった。

初めての恋だった。


彼女という特別な存在がいる紺野くんを、私は好きになってしまった。

諦められずに、あの日まで恋を捨てずにいた。



叶う可能性がないことは、自分でも分かってた。


それでも、伝えたかった。

諦める為に、終わらせる為に、自分でこの気持ちを伝えたかった。