さよならの魔法




(お母さん………。)


ああ、やっぱり、私は愛されない。

お腹を痛めて産んでくれたはずなのに、あの人は私を見てはくれない。


愛して欲しいとそう願うのは、ワガママなことなのだろうか。

今でもそう思ってしまうのは、私があの人の娘だからなのだろうか。



ふと、よぎる切なさ。


愛されない。

愛されたい。


でも、愛されない。

これから先も、きっと変わることはない。



「………。」


あの頃感じていた思いを振り切る様に、同封されていたハガキに目を向ける。


手にした瞬間、私は持っていたバッグを落としてしまっていた。

先ほど以上に私を動揺させたのは、真っ白なハガキの方だった。





天宮 春奈 様



20××年1月10日


市立弥生が丘中学校

平成××年度卒業生

3年1組 同窓会を開催します。



ご都合のよろしい方は、是非参加して下さい。



目に映る景色が、途端に色褪せていく。

色鮮やかに映っていたはずの景色が、色を失っていく。


時計の針が回る。

クルクルクルクル。

逆回りで、私の中の古い時計が回り始める。



戻っていく。

戻りたくないのに、戻らされる。


あの頃に。

私が捨ててきたはずの過去に、引き込まれていく。










「おはよ!」


紺野くんと、初めて交わした言葉。


一言だけだった。

ただの挨拶ではあったけれど、その言葉は私にとってかけがえのない言葉となった。



笑顔が、とても爽やかで。

太陽みたいに、キラキラしていて。


恋に落ちるのに、時間なんて必要なかった。

一瞬で、心を奪われた。



穏やかでいられたのは、1年生の時だけ。

心静かに恋をしていられたのは、クラス替えがあるまでだった。


2年に進級してからは、つらいことの方が多くなっていった。

切ない想いをすることが多くなっていった。



「あ、ごめんねー。腕が当たっちゃったみたい………。」