さよならの魔法




私は美大で絵を描き、千夏ちゃんと千佳ちゃんは別の大学でそれぞれ好きなことを学んでいる。


別の大学に通っていれば、毎日顔を合わせることも自然と難しくなる。

そのことが、始めは寂しくて仕方なかった。



仲がいいのは、今でも変わらない。

大学で新たな出会いがあっても、私の中での1番の友達はこの2人であるのだ。


いくら仲良しでも、寂しくても、高校時代と同じ様にとはいかないから。



だから、こうしてたまに約束をして、お互いに時間を作っては遊んでいる。


離れてしまっても、友情は変わらない。

築いた絆まで、消えてしまう訳じゃない。



お互いに忙しく過ごしているけれど、友達の存在を忘れたことなんてなかった。


いつも、心に2人がいてくれる。

私を支えてくれる、大切な人達だ。




「ハルー、早く!」

「ほら、DVDセットしちゃうよー。」


今日は、みんなでDVDを見ようと決めていた。


外で遊ぶことが多かったから、たまには家の中でまったりしようという話になったのだ。

ここに来る前に寄り道した場所の1つは、レンタルビデオ店だ。



レンタルビデオ店で、大量にDVDを借りてきて。

近所のスーパーで、ジュースやお菓子も買い込んできて。


気分は既に、まったりモード。

千夏ちゃんと千佳ちゃんなんか、泊まる気満々で部屋着まで持ってきてるんだから。



「ちょっと待ってて。今、行くー!」


私は慌てて、家の中に入ろうとする。


まずはテーブルを拭いて、お菓子とジュースを置かなくちゃ。

寒いから、ファンヒーターもスイッチを入れないとね。


ああ、くつろぐ前にはやることがある。



その時だった。

あることに気が付いたのはーーー………





いつもは、空っぽの郵便受け。

真っ赤な郵便受けの中に、何かが入っているのが見える。


何だろう。

朝、ここを出る時には、何もなかったはずなのに。