思えば、いつだって私を守っていてくれた。
あの町に残そうとはせず、東京にまで連れてきてくれた。
あの町に残ったままだったら、私の心は更に病んでいたことだろう。
「そういえば、ハルのお父さんは元気?」
千夏ちゃんの隣に来た千佳ちゃんが、首を傾げてそう聞く。
千佳ちゃんは、千夏ちゃんの姉だ。
双子だから同い年だし、生まれたのは数分の差しかないらしいけれど。
だからなのか、妹の千夏ちゃんよりも少しだけしっかりしてる気がする。
顔はそっくりでも、性格はやはり違うのだ。
同じ親から生まれて、同じ日に生を受けても、別個の人間なのだから。
「お父さん?元気だよ。まだ仕事してるはずだから、家にはいないと思うけど………。」
私がそう答えれば、今度は千夏ちゃんが口を開く。
「私、ハルのお父さん、好きだなー。渋いのに優しいんだもーん!」
「あ、分かる分かるー!うちの親も、ハルのお父さんみたいだったらいいのに………。」
「私、千夏ちゃんと千佳ちゃんのお父さん………普通にいいと思うよ?」
高校時代は、千夏ちゃんと千佳ちゃんの家にもよく遊びに行っていた。
夜ご飯まで、ご馳走になってしまったこともある。
その時に感じたのは、温かさだ。
家族としての温もりが、そこにはあった。
家族がみんな揃って、食卓につく。
みんなが笑い合って、お互いのことを話す。
当たり前のことだけど、どこの家庭にもその風景が存在している訳ではないことを、私は誰よりも知っている。
うちにはなかった。
笑顔も。
同じ食卓を囲むことも。
温かいって思った。
こんな温かい家庭で育てられたから、この2人は真っ直ぐなんだなって思ったんだ。
ちょっとぽっちゃりのお父さん。
いつも綺麗にしていて、まるで姉妹にでも間違えられてしまいそうなくらいに若く見えるお母さん。
その両親の間に生まれた、仲のいい姉妹。
しかし、千夏ちゃんと千佳ちゃんは、ぽっちゃりのお父さんのことを気にしているらしい。
