side・ハル







茶色く染めた髪。

ギャルメイクってほど濃くはないけど、それなりにメイクだってしてる。


服装だって変わった。



あの頃の私なら絶対穿かない、短めのショートパンツ。

長めのニーハイソックスに、真っ黒なブーツ。


変わったと思ってた。

変わったと思い込んでいた。



あの頃とは違うのだと。

違う自分になれたのだと、そう思っていた。


昔の自分なんて思い出せないくらいに変われたと思い込んでいただけで、それは思い込みでしかなかったのだ。



本当の私は。

変わった外見の中に隠した、本来の私は。


きっと、あの頃と同じままーーー………










「うわー、ハルの家に遊びに来るの、すっごい久しぶりじゃない!?」


後ろに立つ千夏ちゃんが、弾んだ様子でそうはしゃぐ。



「そうだねー!高校の頃はよくお邪魔させてもらってたのに、最近はみんな忙しかったからね。」


千夏ちゃんの更に後ろには、そう言って苦笑いする千佳ちゃん。



大学2年の冬。


ここは、私とお父さんが住んでいるアパートの前。

寒空の下に建つアパートは、それほど新しい物ではなかった。



古ぼけた、クリーム色のアパート。

どこか薄汚れた色合いが、建てられてからの時間の流れを嫌でも感じさせてくれる。


備え付けの狭い階段を上がって、部屋の前へと辿り着く。



ここに住み始めたのは、今から4年以上前。

東京に出てきてから、私とお父さんはずっとこのアパートに住んでいる。


お父さんだけの稼ぎで、暮らしていかなければならない。

贅沢なんて出来ない。


まして、大学にも通わせてもらっている身だ。



お父さんには、本当に感謝してる。

何度ありがとうと言っても、足りないほどに。


お父さんは、いつだって味方でいてくれた。


あの頃も。

私が変わり始めた、高校時代も。

もちろん、今だってそうだ。