side・ハル







青春は、ものすごいスピードで駆け抜けていく。


寝る時間がもったいないほど。

無駄な時間なんて、1秒もないほど。



大好きだった絵の勉強を、本格的に始めた。


自己流で描くのもそれはそれで自由でいいけれど、1度ちゃんと習ってみたいと思っていたから。

それに、私にも夢が出来た。

何も持たない私にも、私なりの夢が出来たのだ。



絵に携わる仕事がしたい。

大好き絵に関わる仕事がしたいって、そう思う様になった。


好きなことを仕事に出来たら。

それは、誰もが願うことだろう。


叶うかどうかなんて、分からない。

それでも、好きなことを仕事に出来たらいいと思う。



好きなことを仕事にする為に、高校2年になるよりも前から、私は動き始めた。


美術系の大学に行く。

まずは、それが私の第1目標。


美術系の大学に合格したいが為に、専門の予備校に通って。

絵の具の匂いを体に纏わせて、夢中になって絵を描いた。



夢を追いかけるだけじゃない。

千夏ちゃんや千佳ちゃんと遊ぶことも忘れなかった。


2人は、私の宝物だ。



私に、信じるということを再び教えてくれた人。

友達というものを信じさせてくれた人。


怯えもあった。

怖いとも思った。


新たな関係を築くことに。

新たな人生を歩き始めることに。



不安を払拭してくれたのだ。

千夏ちゃんの笑顔が、千佳ちゃんの言葉が、私の奥に潜む闇を薄くしてくれた。


支えられて、ともに歩いた高校時代。



「ハルー、遊ぼー!」

「ねえねえ、ハルー!合コン行こうよー。」


2人に連れられて、何度も合コンだってした。

昔の私からしてみれば、有り得ないことだ。


彼氏という存在が欲しかったんじゃないと思う。

合コンを楽しいと思うより、千夏ちゃんや千佳ちゃんと遊びたいという気持ちが強かったのだ。