さよならの魔法




双子とはいえ、目の前の2人は微妙に違っていた。


顔だけで言えば、見分けがつかないくらいに瓜二つなのだけど。

どんなに似ていても、そこはやはり別個の人間。



千佳ちゃんの髪の色は、千夏ちゃんとは違って黒に近い色だ。

日に透かすと、多少ブラウンに見えるくらいの暗さ。


しかし、メイクはやっぱり、どちらかと言えば濃い目のメイク。

そこは、好みが似ているということなのだろう。


髪の長さは、2人とも肩に付くくらいのボブだ。



「千夏の友達は、私の友達ー!」

「何よ、それ。あんたと私は、別物でしょうが!!」

「千夏の友達なら、悪い子なんていないでしょ。」


そこら辺は、双子ならではの理屈なのか。

それとも、姉妹として信頼しているからなのか。



「ハル、よろしくね。」


千佳ちゃんも、私のことをハルと呼ぶ。

何の抵抗もなく、千夏ちゃんと同じ様にそう呼んでくれる。


勇気を出して良かった。

そう、心から思った。









それからの毎日は、あっという間だった。

退屈なんて感じる暇もないほど、ものすごいスピードで駆け抜けていく時間。


同じクラスになった千夏ちゃんとは、今まで知り合った人の中で、誰よりも仲良くなれた。

もちろん、千夏ちゃんの双子の姉でもある千佳ちゃんも同様に。


千佳ちゃんは別のクラスだったけれど、休み時間の度に私のクラスまで遊びに来てくれた。



2人は、いろいろなことを教えてくれる。

知らなかった世界を、私に見せてくれる。


私は自分のことを変えたいと思っていたけれど、その手助けをしてくれたのは、間違いなくこの2人なのだと思う。




「ハルって、メイクしないよね。どうしてー?」

「ほんと。元がいいのに、もったいない!」

「ねー、試しにメイクしてみちゃったりしない!?」


化粧っ気のなかった私に変身する方法を教えてくれたのも、この2人。