side・ハル







止めて。

止めて。


もう言わないで。


どこかから、声が聞こえる。



「こっち来ないでよ!」


私を避けないで。

嫌わないで。


小学生の私が叫んでる。


しかし、その声が表へと出ることはない。

全てが言えずに、飲み込んでしまつた言葉だつたから。




痛い。

苦しい。


心が張り裂ける。

心の痛みは、体にまで伝わっていく。



誰か、助けて。

誰か、気付いて。


いつになったら終わるの?

いつになったら救われるの?



ねえ、教えてよ。

誰でもいいから、教えてよ。


この状況から抜け出す術を。








「はぁ………っ、はぁ………。」


蒸し暑さを感じて、ふと目を覚ます。


蒸し暑いはずなんてない。

今は、春。


それなのに、どうしてだろう。



こんなに、蒸し暑いのは。

こんなにも、体が熱を発するのは。


滲む汗。

その汗は冷やされて、私の額から滴り落ちていく。



(今のは、夢………?)


夢にしては、リアルだった。


まるで、そこにいるかの様な感覚。

その場にいて、そこで息をしているかの様な感覚。


現実感があり過ぎる夢に、身震いをする。



時計を見れば、まだ午前5時。

いつも起きる時間よりも、ずっと早い時間。


起きるのには早過ぎる時間に目覚めてしまった私は、ぼんやりと窓の外を眺めた。





薄く、明るい空。

淡い闇が消えていき、次第に鮮やかなオレンジ色へと移り変わっていく。


藍色と橙色が混ざり合って、朝になる。



平屋建ての一軒家が、私の家。

そう部屋数が多くない家の角部屋が、私の部屋だ。


4畳半。

狭い部屋の中にも入り込む、眩しい光。