さよならの魔法




また、磯崎さんにいじめられればいいと言うのか。

耐えて耐えて、我慢しろと言うのか。


何を言われても、耐え抜いて。

何をされても、涙を堪えて。



そんなの、もう無理だ。

出来ないよ。


私の心は砕けてしまった。

ガラスみたいに、粉々に壊れてしまったのだ。


あの頃みたいに耐えることは出来ないだろう。

壊れた私では、もう耐えることは難しい。



「逃げちゃ、ダメ………なの?」


あんなところに行けと言うの?

あの場にいて、あの場面を見ているあなたまで、そんなことを言うの?


橋野さんは違うと思っていた。

私の気持ちを、私の心を理解してくれていると思っていた。


まさか、そんな風に思っていたなんて。

私を卑下して、蔑んでいたなんて。



「どうしてダメなの?逃げちゃ、いけないの?………私、私は………、もうあんなところには戻りたくない!」


苦しいだけの場所。

苦痛しか感じない場所。


それでも、行かなければいけないのだろうか。

そこまでして、行く意味はあるのだろうか。



私が反論をしている間にも、橋野さんは私の腕を離そうとはしない。

強く掴んで、どんどん勝手に引っ張っていく。


か弱そうな体のどこから、そんな強い力が出るのだろうか。


容易く、私の体は保健室の外へと連れ出されてしまう。



「や、やめ………て!離して………、お願いだから………。」

「天宮さんの為に言ってるんだよ?」

「私のことを思うんなら、こんなこと………しないで!」


私と橋野さんの言い争う声に、通りすがりの生徒の視線が止まる。

止まった視線が、容赦なく突き刺さる。



抵抗しても、無駄だった。

どんなに抗っても、橋野さんは引っ張ることを止めてくれなかった。


言葉さえ、聞いてもらえない。

私の意見なんて、聞き入れようともしない。


いつになく強引な橋野さんが明かしたのは、意外な事実。