side・ハル







初恋だったんだ。

私にとって、紺野くんは。


紺野くんが、私の初めてを全て持っていく。



誰かにドキドキする気持ち。

いつも、視界のどこかにいる彼を、私は必死に探してる。


話せなくても構わない。

隣で笑い合いたいだなんて、そんな大層なことは望まない。



ただ、近くにいたい。


目が合わなくてもいい。

話せなくてもいい。


少し離れた場所からでいいから、見つめることが出来るだけで良かった。



紺野くんは、私の憧れ。

私がなりたかった、自分。


明るくて、笑顔がとても似合っていて。

爽やかで誰にでも好かれる、クラスの人気者。



私ね、ずっと紺野くんみたいになりたかった。

紺野くんみたいに、クラスのみんなと打ち解けてみたかった。


好き好んで、人見知りでいる訳ではないから。

大人しいだけの私が、私の全てではないと思いたいから。




紺野くんは、クラスの真ん中にいる。

いつだって、クラスの中心で笑ってる。


一方の私はと言えば、教室の隅で固まっているだけ。



違い過ぎるその存在は、決して相容れないもの。



友達もいない私。

そんな私と比べて、紺野くんの周りにはいつも人だかり。


紺野くんの笑顔に、人が自然と引き寄せられる。

紺野くんの笑顔の周りに、自然と人が集まっていく。







紺野くんの隣では、笑えないけれど。

紺野くんと話すことも出来なかったけれど、それでも幸せだった。


中学2年生になるまでは。