今年は、うちのクラスは何をするのだろう。
何の出し物をして、どんな準備をしているのだろうか。
私は、何も知らない。
何も、何1つとして、知らない。
紺野くんの隣には、あの子がいるの?
可愛い声で甘えて、紺野くんの心を掴んでいるの?
去年みたいに。
あの時みたいに。
届かない。
手が届かない。
叶わない。
紺野くんには、もう………近寄れない。
どんどん沈んでいく気持ち。
暗い井戸の底に突き落とされて、這い上がれないでいる私。
伸ばしても伸ばしても、手は届かない。
光の向こうには行けない。
暗い底から、求めているだけ。
手を伸ばして、求め続けているだけだ。
今も。
これからも、きっと。
苦しくて。
泣きたくて。
だけど、それでも思い出してしまうのは、紺野くんの顔。
忘れたくても、忘れられない。
諦めたはずなのに、心に残る影。
負のループに囚われていたその時、保健室のドアがトントンと叩かれた。
控え目なノックの後、開かれた保健室のドア。
横開きのドアがスライドしていき、音を立てて軋む。
外界と私の小さな世界を隔てるものが、取り払われていく。
人の気配を感じても、私は衝立の向こうに隠れたまま。
この衝立の向こうに行けば、私の存在が知られてしまう。
それを避ける為。
しかし、衝立の向こうから聞こえたのは、私のことを呼ぶ声だった。
「失礼します。天宮さん、いますか?」
その声に敏感に反応してしまったのは、その声が誰のものであるかが、即座に分かってしまったから。
その声が、私の耳によく馴染んだものであったから。
(橋野さん、だ………。)
私がここにいることを知っているのは、限られた人間しかいない。
養護教諭の立花先生。
担任の佐藤先生。
職員室にいる先生でも、私がここにいることを知らない先生だっている。
