初めての遠出。
初めてのキス。
全てが照れ臭くて。
思い通りにいかないことの方が圧倒的に多かったけれど、それもまた俺には大切なことだったと言える。
こんな風になりたくて、付き合うことを選んだ訳じゃなかった。
好きになりたかった。
幸せにしてあげたかった。
でも、溝を埋めることは叶わなかった。
茜の手を取ることさえ、出来なくなった。
瞼を重く閉じたまま、俺は別れの言葉を口にした。
「茜、俺達………もう終わりにしよう。」
ごめん。
最後まで、俺は自分勝手だ。
ごめんな。
こんな結果しか、俺は選べなかった。
最後まで、茜と同じ気持ちにまで到達出来なかった。
最後の最後まで、茜と同じ気持ちで茜を愛することが出来なかった。
俺がそう言った瞬間、茜の目からより大粒の涙が零れ落ちた。
雫が煌めいて、沈んでいく。
夕焼け色に一瞬だけ染まって、すぐにコンクリートの灰色と同化していく。
歪む顔。
濡れる頬。
感情を剥き出しにした茜が、俺に問う。
「どう、して………、ねえ、どうして!?」
「………それは」
「わ、私が、天宮さんからのチョコを返せって、そう言ったから?」
「そうじゃない。」
そうじゃない。
それだけじゃない。
確かに、それも引っかかった。
きっかけにはなったのかもしれない。
だけど、それだけじゃないんだ。
茜との別れを決めたのは、もっと前からだ。
今日のことがなくても、同じことを俺は言っていた。
別れようと。
もう終わりにしようと。
遅かれ早かれ、茜に告げていただろう。
すれ違っていたのだ。
今回の件がなくても、俺と茜はすれ違っていた。
俺は茜を避けていたし、茜はそれを分かっていた。
茜との時間も作ろうとはしなかった。
噛み合わない歯車みたいだった。
俺と茜は、上手く噛み合っていなかった。
