さよならの魔法




(天宮が、俺に………)


ドクン。

ドクン、ドクン。


別の生き物の様に、心臓が騒ぎ始める。

波打つ様に、何度も何度も。


ドクンドクンと、飛び跳ねる。



全身の血が、顔に集まっていくのを感じる。

血が一気に集まって、顔を林檎みたいに真っ赤に染め上げていく。


どういう顔をしたらいいんだ?

どうすればいいんだ?


今の俺の顔を言い表すならば、情けない顔。

困惑した顔をしているに違いない。




「天宮さんはー、紺野くんのことが好きなんだって!」


シーンとした空間。

誰も言葉を発しない中で、磯崎が語る。


天宮の気持ちを。

天宮が心を込めて書いたであろうカードを、何の関係もない磯崎が読み上げる。



天宮は、俺のことが好き。

天宮は、俺のことが好き。


出来るなら、この女の口から聞きたくなかった。

ちゃんと、天宮の口から聞いてみたかった。




信じられないのは、今でも変わらない。




あの天宮が、俺のことを好きだなんて。

あまり接点のない俺のことを、好きでいてくれたなんて。


不思議と、嫌な気持ちにはならなかった。



どうしてだろう。

その理由は、自分でも分からない。


彼女である茜からのチョコレートは、重いと感じているクセに。



赤の他人。

あまり関わりすらなかった天宮からの告白に、嫌悪感は湧き上がらない。


嬉しいとさえ思った。



いや、そもそも告白に値するものなのかどうかも、微妙なところだ。


天宮から、直接伝えられた訳じゃない。

磯崎が、天宮の私物を取り上げて、勝手に喚いているだけとも言える。



他人の物を、許可もなく。

自分勝手に、ただ言葉を吐き出しているだけだ。


だけど、嫌だとは思わなかった。

その気持ちを重いとも思わなかった。



そこに、天宮の純粋な心が見えたから。

天宮が描いた絵の様な、美しさを感じたから。