さよならの魔法




人が多くなれば、それだけ呼び出すことが難しくなる。

目立ってしまう。


今日が何でもない、普通の日ならいい。

大して怪しまれず、呼び出すことも出来るだろう。



しかし、今日はバレンタイン。


1年に1度しかない、愛を伝える日。

絶好の告白日和。


そんな日にみんなの前で呼び出せば、今から何をしようとしているかなんて、簡単に露見してしまうことだろう。



結局、紺野くんが登校してきたのは、始業時間ギリギリで。

ホームルームが始まる、2分前。


登校してきた紺野くんを、すかさず増渕さんが捕まえた。





「ちょっと、ユウキ。すごいギリギリだよ?」


咎める言葉でさえ、冗談の様に軽く言う彼女。


紺野くんが気に病まない様に。

そういう配慮が、明るい口調には隠されているのかもしれない。



「悪い。寝坊しちゃって………。」


困った顔の紺野くん。


何だ、寝坊だったんだ。

ただの寝坊で、それで遅刻ギリギリのこの時間になってしまっただけだったんだ。



(事故とかじゃなくて、良かった………。)


田舎だとはいえ、車だって走ってる。

むしろ田舎道だからと、飛ばして走る車も多い。


遅刻の理由が事故だったらと、嫌な予感がしていた。

悪い予感は、ただの予感で終わってくれた。


そのことに安堵して、ホッとする。



「もう、心配したんだからね!」

「………。」

「ユウキ、朝練出ると思ってたのに来ないんだもん。」

「寝過ごしただけだから、心配………すんなよ。」


いつもの2人だ。


お似合いのカップル。

2年生の中でも、1番有名なカップル。



邪魔なんて出来ない。

したくない。


だから、離れた場所から見ているしかないのだ。



だって、私は部外者。

部外者でしかない、ただのクラスメイト。


紺野くんと仲がいい訳じゃない。

増渕さんの友達でもない。


無関係のただのクラスメイトだ。