茜を傷付けない様に。
いつか離れる日が来るまで、上手く付き合っていこうだなんて、思い上がりでしかなかったのか。
俺って、演技が出来ないタチだったんだな。
茜には気付かれていても、仕方ない。
俺の不自然さに茜が気付くのは、当然のこと。
だけど、周りにまでバレていたなんて。
矢田にまで、気付かれてしまっていたなんて。
おちゃらけた矢田でも、ちゃんと見てるんだな。
周りのこと。
友達のこと。
好きだった女のこと。
矢田にまで気付かれているなら、茜はもうとっくの昔に分かっているはずだ。
「いろいろあるんだよ、俺達にも………。」
はっきり言えないことがもどかしい。
言葉を濁して答えるのが、やっとだ。
苦い笑みを浮かべた矢田が、俺を諭す。
「俺が言うことじゃないかもしれないけど、仲良くしろよ?」
「………。」
「茜ちゃんはいい子だぞ。茜ちゃんは………お前のこと、ほんとに好きなんだよ。」
分かってる。
そんなこと、言われなくても分かってるよ。
茜は、元々はそんなに悪い子じゃない。
だからこそ、主体的にいじめをしようとはしない。
いじめに関わろうとはしない。
自分にまで被害が及ぶのを恐れて、関わろうとしないだけ。
自分のことしか考えていないだけ。
俺とどこが違うのかと問われれば、いじめを止めようと思っているか、いないのか。
その1点だけ。
そこが、どうしても許せないんだ。
俺は。
いくら好きでいてくれても、考えていることが違う。
根本的なものが違う。
一緒にいて楽しくても、底にあるものがまるで違うんだ。
異質で、とてもじゃないけど受け入れられないもの。
ダメなんだ。
どうしても、ダメなんだ。
「かわいそうだとは思うけど、しょうがないじゃない!だって、あの子を庇ったら………私が標的になるかもしれないんだよ?」
茜がそんな風に考えてるって思うだけで、気持ちが醒めていく。
