side・ハル







誰かが傍にいてくれるって、こんなに心強いことだったんだね。

自分を支えてくれる人がいるって、それだけで救われることだったんだね。


私、知らなかったよ。

初めて知ったんだ。



家でも私は1人で、居場所なんてなくて。

いじめられていても、1番近い関係にあるはずの両親にすら話せない。


学校でも、それは同じこと。


内気な私に自分から近寄ってくれる人なんていないから、私は学校でもいつも1人ぼっちだった。



気付いたよ。

本当の気持ちに、ようやく気が付いた。


私ね、誰かに話を聞いて欲しかった。


誰でも良かった。

話を聞いてくれるのなら、きっと誰でも。



私は、自分のことを話せる誰かが欲しかった。

そういう存在が欲しかったんだ。


1人で立っていることが、つらくて。

心細くて。


誰かに支えて欲しかったんだって、今、やっと気が付いた。






川の流れの様に、とめどなく流れる時。


押し留めることは出来ない。

砂みたいにサラサラとしていて、手で掬おうとしても、手のひらには何も残らない。


過去も同じで、過ぎ去っていってしまえば、もう2度と戻りはしないもの。



秋は足早に去り、小さな町に冬が訪れる。


山あいにある、田舎町。

私が生まれ育った、小さな町。


長くて厳しい冬が、今年もこの町にやってくる。



寒さでかじかむ手を温めてくれる人は、私にはいないけど。

相変わらず、家に居場所もなかったけれど。


それでも、私は幸せだった。

ほんの少しの幸せを噛み締めていた。



隣に、あの子がいてくれたから。


友達になってくれた、あの子がいてくれたから。



時間を重ねるほどに、私と彼女ーーー………

橋野さんは親しくなっていった。


いじめはなくならない。

磯崎さんの執着ぶりは、目に余るほど。


しつこいくらいに、私に付き纏ってくる。