俺が聞きたいのは、そんなことじゃない。
茜の心。
茜の思い。
茜の考え方だ。
表情を曇らせながらも、俺は茜の言葉を待つ。
渋々といった感じで、茜はこう告げた。
「さ、紗由里ちゃんとは、特別に仲がいい訳じゃないの………ユウキも分かってるでしょ?」
「ああ、それは知ってるけど………。」
「言えないじゃない、そんなこと。大して仲良くもないのに、止められないじゃない………!」
最後の方は、叫んでいる様だった。
誰もいない教室。
2人だけの教室に、茜の揺らいだ声が跳ね返る。
「止めてとか、そういうことを言いたいんじゃないんだ。ただ………」
俺が止めてくれだなんて、言える訳ないだろう。
自分だって、同じなんだ。
茜と変わらないんだ。
いじめられていても、見ているだけ。
眺めていることしかしない、傍観者。
その他大勢の中の1人。
だけど、俺は傍観者に違いないけれど、こう思ってる。
あのいじめを止めさせたいと。
何とかして、天宮を救ってやりたいと。
いじめなんて、バカみたいだろ。
何が面白いんだよ。
わざと、他人が傷付くことを口にして。
罵って。
挙げ句の果てに、表だけではなく、陰でまで悪口を言っている。
自分自身のことでなくても、許せない。
人を傷付けること。
何の理由もなしに、人を弄ぶこと。
理由があったとしても、許されることではないと思う。
その本人と、仲良くなかったとしても。
例え、全く関係がない人だったとしても、耐えられない。
悲しむ人がいる。
苦しむ人がいる。
目の前で救いを求めている人がいるのに、平然となんてしていられない。
俺は願ってた。
茜が、俺と同じ考え方であることを。
いじめなんて、くだらないって。
自分には関係ないことだったとしても、助けてあげるべきだって。
でも、俺と茜の考え方は違っていたんだ。
