一歩【完】




「……んっ…ふ、ぅ」



あなたの優しいキスも





「…あっ、」



熱い抱擁も





「…恵さ、んっ、」



欲情した時の余裕のない顔も







全部全部、愛してました。










「和田さん、別れましょう」




帰り道、

あなたは必ず


私を送ってくれる。





「え…急に、どうしてだい?」




私の暮らすマンションの前、


驚きの隠せないあなた。





「好きな人が、出来たの。



佐藤くんに告白…

いえ、プロポーズされたの。


私もいい歳だから」





感情をなくした笑顔で言った。


私は、嘘の吐ける狡い女だから。





「そう、か…。」



あなたは、泣きそうな顔で笑う。





嘘の吐けない素直な人だから。





「…さようなら、和田さん」