「好きに言ってればいいから。智海。
でもさ、ほら、いい曲じゃん。
泣きそうでしょ。
こっちの曲もいいんだから」
なんて智海に熱く語りながらプレーヤーを弄っていく。
「はいはいっ。私も嫌いじゃないよー。
Ryoの繊細な感性好きだし、Reiの無口で不愛想で、
だけど黙々とベースに向き合ってる仕草とか……。
RyoとReiはセットでお願いします」
なんて勢いに任せてわけわかんない発言をしてくる智海。
そんな会話に深くついていけるはずもなく、
その辺りは適当に、聞き流しながら日々を過ごしていた。
昂燿に帰ったアイツは、珍しいことに
3日か、4日に一回はメールか電話が届くようになった。
それだけでも進歩は進歩かっ。
今まではそれすらなかったもん。
私が出したメールにも電話にも返事すら放置されてたんだから。
期末テスト。
一週間続くテスト地獄。
全教科、70点以上がとりあえず今回の目標。
一教科でも60点をきると鬼の補修と、
この学院独自のシステムで全教科の追試が言い渡されちゃう。
ちなみに追試の時は全教科70点以上が合格ライン。
ちなみに追試でも赤点になっちゃった時は、
進級試験の時に、ラストチャンスの最終追試。
そこでクリア出来なかったら、
留年決定と言う、恐るべきテスト。
後になるにつれて、ハードル高すぎるから、
最初のテストが落とせない。
そんなわけで、テスト期間に突入すると
部活に必死な特待生も、テスト勉強が最優先。
テストの後に遊びに行く子たちもいるけど、
そんな余裕がないままに、集中して勉強する時間。
明日が試験最終日になる夜、
紀天からいつものように連絡が入った。
何時の間にか、携帯にダウンロードされた着信音もSHADE。
曲で紀天からの電話だとわかった私は、
シャーペンを握る手を止めて、携帯電話を掴みとった。