ようやく姿を見せたアイツは、
歩みを止めて、ただオレを黙って見つめる。




「オッス。
 こっちに用事あって来たからお前が出てくんの待ってた。

 どうせ、帰る方向一緒だろ」



そうやって声をかけたオレにアイツは開き直ったように、
駆け出してきて声をかける。



「まっ、いっかぁー。
 今日は用事も入ってないから紀天に付き合ってやるよ」



そうやって切り返すアイツが可愛くて。


グイっと腕を掴んで思わず抱き寄せる。



「バっ、バカっ。
 何してんのよ。

 ほらっ、電車乗り遅れたら大変なんだから
 行くわよ」


オレの手を振り切ってスタスタと先を歩くアイツを
追いかける俺。




電話から繋がった週末の約束。





帰って来て良かった……心から思えた。




アイツは……晃穂は強いようで弱いから。

こういう時は支えてやりたい。


それはオレの偽りのない思いだから。



伝えることが出来ない秘めた思い。





アイツの存在があまりに近すぎて
忘れがちになる……距離感。




だけど今だけは隣に居るアイツは、
オレだけの宝物。