そうやって電話の向こうで声を震わせるアイツ。

そんな強がりも、やせ我慢もすんなよ。
お前がそんなことしても、お前のことはオレに筒抜けなんだよ。


チクショー。
でもアイツをそんな状態にしたのは、確実にオレだろ。


尊夜探しを気負って、伊吹との関係にぎくしゃくして
オレ自身が自分を見失っていたから。


だから……帰るって決断して良かったって
間違いはなかったって思えるよ。


竣佑さんの用事で一緒にいくなんて口実だ。


オレも素直に、伝えられねぇし逢うために帰るなんて言ったら、
お前はどうせ強がって拒絶する。


だから『ついで』って形が一番なんだよな。


「なら、多少連絡出来なくても平気か?
 
 週末、帰るの取りやめてもいんだけどな。
 そろそろ、お前が泣いてそうな気がしたんだけど」

「バカ。

 何言ってんのよ、アンタ男でしょ。
 男だったら一度自分が口にした発言に責任持ちなさいよ。

 今週末、帰ってくるんだよね。
 わかった。
 
 私も週末は開けとくから」


「サンキュー。
 悪いけど親父と咲空良さんに順番にかわってよ」


これ以上、会話を続けてると
オレがアイツを無意識に傷つけてしまいそうで。


精一杯の虚勢に寄り添ってやるのも今は多分必要で、
親父たちに変わって貰う形で時間をやり過ごした。


親父と咲空良さんにも、週末帰宅することを伝えて
今日、アイツを誘って気分転換させてくれたことのお礼を伝えた。


その後も週末までは、何時もと変わらない日常。


週末、授業が終わったと同時に
竣祐さんの家の車で、悧羅校へと向かった。


悧羅校の生徒総会室に、少し竣祐さんと顔を出して
その後は、悧羅校の校門前でアイツが出てくるのを待つ。



「おっ、紀天。
 久しぶりだな」


なんて、流石の古巣。
知ってる奴から、次々と声がかかる。

そんな声を適当に交わして、オレは晃穂が出てくるのを待った。


ボーっと待ち続けること30分。