「えっ?」


慌ててドアを一気に自分の方に引くと、
誰も居ない殺風景な部屋。




部屋にあるのは、備え付けられた家具、
そのままの閑散とした空間。


ベッドの上には、
キチンと折りたたまれた掛布団。



「お邪魔しまーす」



声をかけて部屋の中に入り、
クローゼットの扉を開いてみる。




隠れてねえかなって思うのもあるけど、
やっぱりこれで出てくるわけねぇよな。



姿をくらませた伊吹。


肩を落として、部屋を出ながら寮をふらふらとさ迷い歩く。


アイツの姿を探して。



子憎たらしいジュニア。
どこか、寂しそうなジュニア。


イラつくことも多々あるのに、
一緒に過ごす時間は、満更でもない。


多分、弟が身近にいたら
こんなもんなのかも知れない。


そんな振り回される感覚も、
やっぱりオレには、多分楽しい感覚なんだ。



なぁ……お前が尊夜だったらって
心の何処かで、オレは思ってるんだ……。



「紀天、どうしました?」



ふいに声が聴覚に届く。



「KING……、竣祐総代」


その二人の後ろには惣領国臣と瀧川深由。



「デューティー高臣。
 ボクは深由とスタジオにいきます」



そう言って一礼して歩いて行く二人。


「デューティ。
 伊吹が居なくなりました。

 オレ……今朝、アイツを傷つけたかも知れなくて」



まとまらない思考は上下関係の言葉遣いなんて
気にする余裕すら与えなくて。



そう言うと、KINGはすかさず
何処かへ携帯を取り出して連絡する。