「グランデューティ、失礼します」



そう言って中に入った竣祐さんが
グランデューティと呼んだ相手は現・学院総代。



神前悧羅学院三校の総代から、
更に三校の長としてポジションを持つその人。

伊舎堂裕【いさどう ゆたか】。




「竣祐、紀天、入りなさい」



通されたその部屋には先に来客が姿を見せる。


真っ黒な黒髪に少し高めの細長い少年。



「伊吹、こちらに」



最高総がそう呼んだ少年はゆっくりと近づいてくる。



「紀天、こちらが君のジュニア。
 瑠璃垣伊吹【るりがき いぶき】です。

 伊吹、デューティーに挨拶を」




突然告げられた瑠璃垣の名前。


その名前に思考回路が停止する。



瑠璃垣の関係者が昂燿校に通ってるのは知ってた。


まずは遠くから眺めながら見つめて、
見極めてから核心に触れようと思ってた。



なのに……いきなりかよ。



「紀天、ジュニアの前です。
 どうしたのですか?」



デューティの声が聞こえる。



此処は……学校。
オレはデューティー。


アイツは……。




「初めまして。

 悧羅校から今季より転入して、
 君のデューティを拝命した廣瀬紀天です。

 オレのデューティは、竣祐高等部総代。
 
 君にとってもシニア・デューティとなります。

 宜しくお願いします」


言葉を選びながら挨拶を終えた
ゆっくりと差し出した右手。




その両手は握り返されることなく宙を浮いたままで、
伊吹と呼ばれた彼は「瑠璃垣伊吹です」っと黙ってオレに一礼した。



「あっ、紀天の質問に答えよう。
 君の隣の部屋は、伊吹の部屋」





追い打ちをかけるように切り返されたデューティーの言葉。



その言葉に半ば戸惑いを感じながら、
オレの昂燿校での初日は幕を開けようとしていた。