「紀天、大丈夫か?」
何時の間にか近くに来て、俺に囁く伊吹の姿の尊夜。
「なんとかな」
「確かに、あの寝相アートは楽しかったけどな。
オレもヤバかったんだよな。
あの家に居たら」
ボソっと呟いたアイツの声が、やけに耳についた。
「お待たせいたしました。
新婦の晃穂さまのお色直しのお支度が整ったようです。
一度、新郎の紀天様にもご退席いただいて再度ご入場をお願いします。
新郎の紀天さまの介添えをして頂くのは、
神前悧羅学院で、紀天さまのジュニア、学院内の弟として長く過ごされてきた
瑠璃垣伊吹さまです」
司会の言葉に戸惑いながら、俺は一礼して尊夜と共に高砂席を後にした。
外に出ると、そのまま俺は新郎の控室へと直行して俺も衣装を着替える。
「なぁ、尊夜。お前ら企み過ぎだろ。
俺と晃穂が必死に考えたのも、無駄だったろうが。
その分、サプライズが多すぎて楽しいけどな。
もう、何が出てきてもびっくりしないからな」
着替えの後は、再び鳳凰の間の入り口にたって
拍手と共に会場内へと迎え入れられる。
テーブルの一つずつにまわって、キャンドルサービスをして
記念写真をとりながら、再び高砂席を目指す。
その後はウェディングケーキのカットにファーストバイト。
お皿に用意されたケーキを互いに食べさせあう儀式。
そんな照れくさい儀式を終えて、再びスクリーンに映し出される。
映し出されるのは、お母さんからのビデオレター。
いつもの様に、病室で母さんとの会話のやりとりがあった後、
カメラに視線を向けて、真っ直ぐに向き直った。



