「新郎新婦のお二方は、こちらの方で入場のお支度を」


案内されるままに、二人で臨む緊張の時間。


室内からオーケストラの音色が広がる。


あれっ、予定と違わないか?
ここは……。



二人して焦り始める俺たち。


そのまま鳳凰の間に続く扉が開いて、
拍手と共に迎え入れられる。



「新郎新婦のご入場です。皆さま、拍手でお迎えくださいませ。

 本日、入場の演奏をお届けしておりますのはDTVTオーケストラ。

 新郎新婦の神前悧羅学院時代の先輩にあたる皆さまが所属されていてる
 楽団でいらっしゃいます。

 今日の良き日にあたり、皆さまも祝福の声を届けたいとこのような形を
 急きょとらせていただいています」



司会の人の言葉に、驚きながら俺たちは高砂へと着席した。

拍手と共に始まった披露宴は予定通りに進んでいく。



俺にとっては、二人のデューティーから貰った祝辞。
アイツには、智海ちゃんと宝珠さんから貰った祝辞。



お色直しへと退室していく晃穂。

この日の為に仕立てて貰ったらしいカラードレスに着替えるまでの間、
俺は一人、披露宴会場に残る。



スクリーンに映し出されるのは、俺たちが生まれた日から今日まで歩き続けてきた思い出のアルバム。




一月生まれの俺に、二月生まれのアイツ。

生まれた時の写真から、寝相アートで遊ばれ続けた写真が
スクリーンに表示されるたびに、招待客からは笑い声がわきあがる。




流石に……この手の自己紹介が流れるバックに俺が一人って
拷問に近いなー。


なんて少し現実逃避したい気持ちを堪えながら、
視線を背ける。




今日の尊夜は、廣瀬尊夜としてではなく、俺のジュニアとしての瑠璃垣伊吹として
メインを過ごし続ける。