「優歩ちゃん、今回も有難うな」

「ふふっ、別に構わないわよ。
 晃穂ちゃん、何か気になることがあったら何時でも声かけて。

 次のお色直しの時も待機してるから」



優歩ちゃんはそう言うと、控室を退室して席を外してくれる。





お母さんが結婚式に着ていたらしいドレスは、
直しを経て、アイツの体にぴったりとフィットしてる。




「紀天、私……本当に良かったのかな。
 心お義母さんの着てたドレス、着せて貰って」

「多分、お母さんも喜んでるよ。
 お母さんのビデオレターで言ってた願いだから」

「さっ、披露宴の前に挨拶に行くか。

 会場がデカすぎて学院時代の先輩から、音楽仲間まで幅広く招待してるからな。
 しかも、嬉しいのが招待した殆どの人たちが俺たちを祝福してくれてる」

「うん。そうだね」

「行こうか」




真っ白なウェディングドレスを着たまま控室を出た晃穂。
晃穂が移動するたびに、介添えのスタッフがドレスの裾を移動させていく。



すでに鳳凰の間の前には、見知った先輩や同級生たちが姿を見せる。



最初に挨拶に向かったのは、凌雅と智海のところ。
二人は俺たちの披露宴の受付を手伝ってくれていた。



晃穂のジュニアだった優愛が作ってくれたハンドメイドのウェルカムベアが
受付で招待客たちを出迎えてくれていた。




「紀天、晃穂おめでとう。
 お前たちに先を越されたけど、こうやって祝福出来て嬉しいよ」

「有難うな。
 お前たちの結婚式でも、なんでも裏方やってなるから」

「あぁ」



俺と凌雅が会話をしている間に、晃穂は智海ちゃんと話を弾ませているみたいで
受付をしに来てくれた招待客の登場に、俺たちはその場を後にした。


披露宴が始まるまでの間、
訪れてくれた先輩や久しぶりに再会した同級生たちとひと時の時間を過ごす。



「それでは、皆さま鳳凰の間へご入場ください。
 まもなく披露宴が始まります」


コールが流れると来てくれた人たちは一斉に
テーブルの方へと移動していく。