「さぁ、デューティとジュニアの挨拶も終わりましたし、
紀天も車の中へ。
寮につくと、私のジュニアもいます。
どうぞ、紀天も仲良くしてくださいね」
そんな会話をしながら、導かれるままに車に乗り込んで学園都市を車で走り抜ける。
寮生活の学生が不自由しないようにと、
学院に提携する大手企業のデパートなどのお店が連なっている街並み。
学園都市にを回遊しているモノレールを見送りながら
辿りついたその場所は、沢山の建物が並んでいた。
チェスの駒の名前が付けられた寮。
上の学年に上がるにつれて、
二人部屋や、個室に変わっていく寮。
すでに寮の前には、新学期を前にして
部屋の引っ越しをする生徒たちの荷物でごった返していた。
「紀天はこちら」
そう言って連れ込まれた部屋は、やはり悧羅の時と同じで昂燿パレスと呼ばれる寮。
生徒総会メンバー専用寮・パレス。
生徒会役員の寮はキャッスル。
役員関係者の寮のみ、特別の名称で呼ばれ、
他の寮のようにチェスの駒の名称がついていない。
パレスのガラス扉が開くとメイトロンと呼ばれる、
寮の中で家事を手伝ってくれる女の人が会釈する。
「お帰りなさいませ。
メイトロンの片村です」
「初めまして。
今季より、昂燿校でお世話になります。
三杉竣祐総代のジュニアとなりました、
廣瀬紀天です」
覚えたばかりの、デューティの名を借りて
メイトロンに自己紹介する。
「お帰りなさい、KING」
エントランスホールで、メイトロンと会話をしているオレたちの前に
慌てて階段から駆け下りてくる少年。
明るいオレジン系の髪をくくったエメラルド系の瞳を持つ少年は、
KINGの傍に駆け下りると、静かに膝を折った。



