「紀天、晃穂ちゃん今日はおめでとう」
「憲さん、晃穂さんおめでとうございます」
「紀天さん、晃穂さん、幸せになってくださいね。
兄さんも凄く喜んでると思うから」
「晃穂、お幸せになりなさい。
紀天、晃穂を泣かせたら承知しませんわよ」
メンバーと宝珠さんそれぞれに祝福を貰って、ロビーへと再び戻る。
「廣瀬家、絹谷家の皆様、お時間でございます。
亀の間にお入りください」
スタッフのコールと共に親族は先に亀の間へと案内される中、
私と紀天は、式の前の最終の打ち合わせに向かった。
神前式用の所作を一通り教えて貰って、頭の中に叩きこむと
そのまま挙式の時間となる。
亀の間で親族通しの顔合わせを終えた両家の親族が、
社殿の近くへと集まってくる。
「それでは、これより廣瀬家・絹谷家、ご両家の挙式をとり行いたいと思います。
巫女が迎えに参りますまで暫くお待ちください」
スタッフが挨拶をして一礼すると、シーンと静まり返る。
そんな中、参進の儀(さんしんのぎ)と呼ばれる花嫁行列が始まる。
太鼓の音色が厳かに響いた後、社殿の方から赤い絨毯の上を二人の巫女が並んで迎えに来る。
その巫女さんに誘導されるような形で私とアイツは、緊張の中社殿へと歩いていく。
その後ろにはずらずらと親族が行列を連ねて、神社に参拝に来た参列者からの温かい視線も感じる。
ゆっくりと一礼して社殿の中央用意された、新郎新婦の席に着席する。
チラリと隣を見たアイツも、かなり緊張しているみたいだった。
アイツの親族・私の親族が両隣のテーブルに順番に着席しているのが感じられた。
そして修祓【しゅばつ】の儀と言う名のお祓いの儀式で身を清めて貰う。
献饌【けんせん】。神様にお供え物をする儀式。
その後は、斎主による祝詞奏上【のりとそうじょう】。
斎主の唱える祝詞の中に、自分の名前とアイツの名前が入っているのに
少しだけ心が温かくなる。
祝詞奏上の後は、巫女さんが神殿から運んできたお神酒で三三九度を交わす三献の儀【さんこんのぎ】。
小・中・大の杯に順番に注がれるお神酒を、アイツと私で三回×三回=九回にわけて飲んでいく。
その後は神楽奉納【かぐらほうのう】。
神楽の後はいよいよ、アイツの出番。
誓詞奏上【せいしそうじょう】と呼ばれる、新郎新婦の誓いの言葉。