緑のトンネルを潜るように車を走らせた奥に広がっているのは、厳かな神社。


「えっ?紀天、何?」

「俺たちの結婚式」


驚く私に、紀天は車を運転しながら何事もなかったかのように答える。



「ちょっと、紀天仕組んだの?」


可愛げがないと思いながら、そんな言葉しか出てこない私。


「仕組んだって言うか、俺もある意味嬉しい被害者かな。
 これ仕組んだの、お前のデューティーと俺らの弟。

 後は託実たちかな」


そう言うと車は駐車場にとめられて私は、アイツの車の助手席から降りた。



「お待ちしておりました。新婦の絹谷晃穂さまは、こちらへ。
 新郎の廣瀬紀天様は、こちらへお願いします」



式場スタッフらしい存在が中から出迎えてきて、
私たちはそれぞれの部屋へと連れられて行く。



「本日はまことにおめでとうございます。
 華京院さまとのご縁で、この度、お手伝いをさせて頂きます岩城【いわき】と申します。
 
 それでは新婦様の御支度を始めたいと思います。どうぞこちらへ」


ドアを開かれて、室内に入るとそこには、何時の間に支度されたのか
白無垢が飾られている。 


そしてAnsyalのメイクアップを手掛ける、優歩【ゆある】が姿を見せた。


「初めまして、優歩です。

 今日は憲さんとの挙式、心からお祝い申し上げます。
 十夜と託実に頼まれて、今回担当させて頂くことになりました。

 宜しくね」


そう言って差し出されたのは、Ansyalの専属のメイクアップアーティスト・優歩。


「えっと、今日は宜しくお願いします」


そう言って挨拶をした後は、もう「どうにでもなれ」「なるようにしかならない」そんな感じで
心境的には、まな板の上の鯉。