「まずはこれだな。
父さんがお母さんに昔プレゼントした指輪だ。
お母さんの想いと共に、晃穂ちゃんに渡してやってくれ」
そう言って託された、ダイヤモンドが輝く指輪。
そして次に母さんが、真っ白いボックスの中から引っ張り出したのは
真っ白なウェディングドレス。
圧縮を解いた途端に、一気に広がったドレスに一瞬驚く俺自身。
「このドレスを来て挙式していた心【しずか】は本当に綺麗だったのよ。
ホント、懐かしいわ」
そう言って、母さんはドレスをハンガーへと吊るしてフックに引っかけた。
「このドレスは父さんのお母さん。
お前の亡くなったお祖母ちゃんが、心【しずか】の為に縫ってくれたものなんだ。
心【しずか】は凄く喜んで着てくれてね。
おふくろも凄く喜んで泣いてた」
そうやってドレスに纏わるエピソードを語る父さんは、
そっとドレスに手を触れた。
「わかった……。
お母さんの想いも、晃穂だったら受け止めてくれると思う。
まっ、問題はサイズだろうけどな。
アイツ、スポーツやってただけに体はがっしりしてるからな。
それもなおして貰ったら大丈夫だろ」
「そうだな。
直しを必要な時は、父さんが手配しよう」
「別に俺のことだから、こっちで手配するよ。
Ansyalの衣装担当スタッフに個人的に頼むことも出来る。
明日、晃穂はアイツのデューティーと外出予定だ。
けどアイツにプロボースする前に、小父さんと小母さんにだけは
挨拶しておきたいと思う。
アポイントだけ頼んでいいか」
先方へとアポを依頼した俺に、咲空良さんは嬉しそうに
その場で携帯を手に連絡を取りはじめた。
一気に動き始めた現実。
その夜、俺は尊夜の携帯番号を呼び出してアイツに連絡した。



