「紀天、何だか照れくさいねー。
 今はまだちっちゃなちっちゃな私の紀天。

 紀天がこのメッセージを聞くとき、紀天は何歳になってるのかな?
 20歳は超えてる?

 それとも……まだ未成年かな?
 
 お母さんは……その時、紀天の隣に立っているのがお隣の晃穂ちゃんだったらって
 凄く願ってる。

 だけど……どうなってるかなんて、わからないよね。

 だけど紀天がこのメッセージを聞いているってことは、
 紀天に好きな人が出来て、その人と結婚したいって思うようになったってことだから
 お母さんは、お前の隣に立つ人がどんな人でも、お前の幸せを心から祈りたいと思います。

 本当はその場でお母さんも、お前の幸せそうな笑顔を見ていたかった。

 だけど……お母さんは……それは叶いそうにないから、
 こんな形で、お前の幸せを祝うね。

 お母さんのこの指に輝いているのは、お母さんがお父さんからプロポーズされた時に貰った婚約指輪です。

 お母さんは結婚指輪を天国まで持っていくから、その婚約指輪はお父さんに託します。
 将来、お前が好きになった人にお母さんの想いと共に渡して頂けたらと思います。


 紀天、婚約おめでとう。
 紀天の彼女が許してくれたなら、結婚式には私が着たウェディングドレスをもう一度光の世界に。



 咲空良、こんな感じでいいかな。
 もう何話していいか、わかんなくなってきた。

 睦樹、そう言うことだからお義母さまが手作りで作ってくれたドレス、紀天の彼女に渡してあげてね。
 少し疲れたから、休むね。

 おやすみなさい」


*


お母さんはそんな言葉を最後に残して、そのビデオレターはプツリと終わる。




「あらっ、懐かしい。
 睦樹さん、久しぶりに見た心【しずか】ね」

「あぁ。
 アイツも喜んでるだろうな。

 紀天、少し待ってろ。お母さんから預かってるものを持ってくる」




そう言うとグラスの中身を飲み干して、父さんはリビングを後にした。


暫くして、小さなジュエリーボックスと、真っ白い大きなボックスを手に
リビングに姿を見せる。