二時間のサスペンスドラマも佳境に入ってきた頃、
父さんが静かに話をきりだした。
「紀天、晃穂ちゃんのことどうするつもりだ?」
突然の話題に、覚悟はしていたものの思わず咽る。
「睦樹さん、ストレートすぎですわ。
紀天、ほら貴方も大丈夫?」
そう言いながら、背中をさすってくれる母さん。
「落ち着きなさい……。落ち着いた後、ゆっくり話せばいいわ。
今日は時間はたっぷりあるんだもの。
紀天は、晃穂ちゃんと今も付き合っているのでしょう?」
優しく笑いかけながら、咲空良さんの視線も真っ直ぐに俺を捕える。
「晃穂とはいつかは結婚したいって思ってる。
だけど……今はまだ、俺のことより尊夜を優先にしたいって言うか……
アイツもそんな俺の理解者だし。
尊夜が落ち着いたら、俺は晃穂と結婚したいって思ってる」
本音を伝えて、緊張からの喉の渇きを潤すように
ハイボールの残りを一気に飲みほす。
「ほらっ、やっぱり。
睦樹さん……」
意味深に告げる咲空良母さん。
「紀天、紀天と晃穂ちゃんの想いは思いのままで構わない。
だけどお前はそのことを晃穂ちゃんのご家族には正式に伝えたかい?
お父さんも、隣の久興【ひさおき】さんも、晃子【あきこ】さんも
そして心【しずか】も昔から、そんな日が来たらいいと思ってた。
それは咲空良さんだって同じように思ってくれてる。
けれども、お前は一向にそんな素振りを見せない。
晃穂ちゃんも、もう素敵なお嬢さんになってるだろう。
そろそろケジメをつける時期だと思わないか」
父さんがグラスを傾けながら、ゆっくりと語る。
父さんの言葉を一通り、俺自身の中で消化して
俺は二人に向き直る。
「わかったよ。
久興おじさんも、晃子おばさんも待ってるんだったら
とりあえず、晃穂と婚約の申し込みだけでもしてくる。
それでいいだろ」
そうやって言葉に出すと、俺自身の胸のつかえも少し吹っ切れたような気がした。
「睦樹さん。
だったら、心【しずか】のビデオレターの出番ですよね」
そう言って、咲空良さんが手にしていた一枚のディスクを俺の前に差し出す。