「怜さん」



楽屋を入った途端に、車椅子の怜さんを見て紀天が驚く。



「晃穂ちゃん、紀天、良く来てくれたね。
 今日は楽しんでいって貰えると嬉しい」

「怜さん、今日は本当にお招き有難うございます。
 ファンクラブもモバイルも一般も惨敗でチケットが取れなくて
 会場の外で、音漏れだけでも楽しむ覚悟だったんで、
 本当に紀天がチケット手渡された時は泣きました」

「喜んでもらえて良かったよ。
 紀天、君も来てくれて有難う」

「いえっ。こちらこそ、招待して頂けて嬉しいです。
 でも……怜さん……どうして……」

「あぁ、車椅子のことかな?
 SHADEの解散の背景には俺の闘病があって
 今は体力保持を第一に考えて、強制車椅子。
 羚が歩かせてくれないんだよ」

そんなことを言いながら切り返す。

「怜さん、最終打ち合わせ入ります。
 いいですか?」

「あぁ、いいよ。羚、車椅子頼んでいいか?」

怜さんが声をかけるとそのまま羚さんは部屋に入って来て、
怜さんを楽屋から連れ出していく。


「今日のLIVEゆっくりしていってくれ」
「有難うございます」

「それでは」


怜さんの背後にまわって車椅子を押していく羚さん。

そんな二人を見送った後、
私たちは、関係者席の方へと移動した。


黒づくめのファンたちで埋め尽くされた会場内は、
少しずつBGMが大きくなって、
暗転と同時に懐かしい序章が包み込んでいく。


歓声と共に迎え入れられるSHADEのメンバー。