封筒の裏面には、Ryoとだけ流麗な文字で綴られていた。



「遅くなってごめん。
 仕事が立て込んでたから。

 実家に届いてたらしくて今日、父さんが持って来てくれたんだ。
 そしたら怜さんだろ。
 
 びっくりして封筒開けたら、明日のチケットが入ってた」


言われるままに慌てて、封筒の中身を出すとそこにはメッセージカードと共に
必死に頑張っても取れなかったチケットと関係者パスポートが二枚姿を見せた。




Dear:紀天・晃穂


都合が会えば来てほしい。
チケットを同封します。








「紀天……これっ……」

「そっ。
 晃穂がずっと行きたがってたチケット」

「アタシがって、私だけじゃなくてアンタも行きたかったでしょ。
 私だけみたいに言わないでよ。

 でも……凄く嬉しい」


私はチケットを握りしめたまま、
嬉し涙が止まらない。



「明日は俺も有給貰った。
 だから朝から一緒に行こう。

 SHADEは俺たちにとって特別だもんな」


アイツは優しく告げながら私を抱き寄せる。

私もそんなアイツを少しでも強く感じようと
アイツにまわす腕に力を込めた。


そのままアイツは、ウチに泊まる形で一夜を過ごして迎えたLIVE当日。


エアコンの効いた部屋で、同じ布団で目を覚ました私は
朝からSHADEの音楽を部屋にガンガン鳴らしながら準備を進めた。


お昼をまわってから、私の家を出るとそのまま
電車で日本武道館を目指していく。


日本武道館の前は、すでにSHADEファンで覆われていて
グッズ売り場も、購入を待つ行列がズラリと続いていた。



列の後方に近づいて、購入までの時間を質問すると二時間半待ちとのこと。
そのまま列に並んで、二時間半待ち続ける私。

そして私の隣には目立つアイツ。


何時の間にか、ざわつきだした周囲にアイツはファンの相手をしながら
紳士的に対応していく。


そのまま私たちはグッズを購入して、関係者入口よりパスを出して一足先に
中へと入らせて貰った。


久しぶりに再会した怜さんは、ステージ衣装とステージメイクを終えたまま
車椅子に座って、ギターの手入れをしているみたいだった。