「脱臼のほかは、とりあえず移動して調べようか。
とりあえず整復は終わったけど肩の脱臼は一度すると、
癖になりやすいから。
病院に戻ったら検査。
結果次第で、将来設計を踏まえて手術だな」
手術って、マジかよ。
「睦樹、今後の検査の打ち合わせをしよう。
裕、託実、彼をうちの病院まで連れてきて」
そう言うと託実の親父さんと、俺の親父は移動していった。
「立てる?紀天?」
差し出された尊夜の手を借りて俺はその場から立ち上がる。
俺の意志で動くようになった肩。
「さっ、私たちも移動しようか?
託実、伊吹、紀天。
紀天も今から大変だからね……」
「まぁ、うちの親父の整形も優秀だから。
オレも中学時代に手術したしな」
そう続ける託実の言葉に、「うへぇー」と思わず声が零れる。
そんな俺の反応に、そこにいる皆は笑ってた。
晃穂が助かったから、
今、こうやって俺は笑ってられる。
そして今の俺には、
頼もしい仲間たちが力を貸してくれるから。
そのまま病院に移動した俺は検査の為、暫く入院。
一般的な日常生活なら、修復しただけで問題ないけど、
俺の場合は激しいドラムパフォーマンスも見せ場なわけで。
そんな魅せるプレイを長時間キープさせるには、
やはり手術は避けられないと判断されて、
そのまま入院生活を続ける羽目になった。
病院で検査をした晃穂も、
腕の擦り傷と、内出血以外は異常なし。
どんだけタフなんだよ。
アイツを助けに行った俺が入院決定で
助けられたアイツは、ケロッと笑ってやがる。
それでも……この怪我はアイツを守った
俺の勲章にも思えた。



