「ったく、無茶するなよ」

「無茶してるのは、どっちよ。
 肩をドアにぶつけるなんて。

 ドラム叩けなくなったらどうするのよ。
 それこそ、私が一生後悔するじゃない?

 後先考えずに行動するの、
 やめろってずっと言ってんじゃん」




そう言って怒るアイツの素振りも
俺には可愛くて。



「イテっ、イテテテ……」



わざと肩を抑える素振りで痛がる俺には、
アイツは途端に不安そうな表情で
ゆっくりと肩に触れようとしてくる。





「はいっ。
 お二人さん、とりあえずそこまでな」




そんな声が背後から聞えて、
俺は現実に戻った。





「紀天、彼女は?怪我は?」



そうやって声をかけて来たのは、
後から追いかけて来たらしい託実。




その託実の隣には、見知らぬ紳士が姿を見せる。
そしてその後ろには、俺たちの裕最高総が姿を見せた。



「あぁ、びっくりしなくていいよ。
 俺の親父。

 怪我してたら困るって思ったから、
 召喚してきた」


そうやって言葉を続けた託実。


「紀天、大丈夫かい?
 こっちに戻っていたから託実に聞いてびっくりして」





そうだよ……。


俺たち昂燿生にとっては偉大過ぎる裕最高総も、
託実にとってはただの従兄弟だったんだ。


そんな後から知った事実と、学院時代の絆。



次から次へと震える俺の携帯には、
何時の間にか知られていた竣祐さんや光輝さんからの着信まで入っていた。