「ここな。

 このカメラが、ほらっ、そこのSHOPの中から外を映し出してるカメラな。 

 んで次はこっち。

 こっちのカメラは、その先のあのオレンジの壁の建物。
 あの店が同じく外を映してる防犯カメラの映像。

 ここに映ってる車は晃穂ちゃんがさらわれた車。
 だが向こうの次のカメラには映ってない。
 んでこの周辺、次に近い防犯カメラはあのスーパー。

 スーパーの駐車場から道路側を捉えたカメラにも晃穂ちゃんがのってる車はいない。
 ってことは、幾ら単純なお前でもわかるよな」


そうやって一つ一つ、状況を説明した後アイツは俺をじっと見た。


そんな中、アイツの携帯に親父さんからの連絡が入る。
警察からの情報を受けて、尊夜の目は核心に得たように目的地の建物へと視線を向ける。


「決定カ?」

「警察の情報で車両ナンバーを追跡して貰った。
 その車は、ここに向かって走らせている形跡がある。
 
 晃穂ちゃんは、この中に居る。

 んでさっき、オレが電話をしたのは、この建物の持ち主。

 コイツ、数日後に解体が決まってるんだ。
 老朽化ですでに一部のコンクリがはがれ出しててな」


そうやって説明を終えた頃、車はその目的地の前らしい場所で静かに停車した。


運転手が後部座席のドアを開けた途端、
俺は立ち入り禁止の看板がかかった表門をヒョイっと二段階で駆け上がって、
飛び越えると敷地の中へと駆け込んでいく。



その背後、誰かの手によって、
門がゆっくりと開けられるのを感じた。




「晃穂、何処だ?」



アイツの名前を呼びながら走る敷地内。



途中に見えたのはアイツが愛用していた、
空っぽになった財布。


そして……アイツの使ってた携帯電話が、
踏みつけられて壊された状態で見つかった。