親父がそう言って俺を安堵させるように肩をトントンと叩いた。


そう言うと、
親父たち三人は元の車へと乗り込んでいく。


「紀天、早く乗れ。
 お前が乗らないと車が出せない」


促されるままに、伊吹の専用リムジンへと乗り込む。


そうやって呟くガキはやっぱり、
あの頃の子憎たらしいガキで。


それでも今は……頼もしくて。



「坂野、合図を送って先に走らせてくれ」

「かしこまりました。伊吹様」


運転手さんは、そう言うと車を走らせていく。


伊吹のリムジンの後を追いかけるように、
黒塗りの車が何台も続いてくる。



「坂野、次は右。
 3キロ先、斜め奥向こう左折」


画面を見ながら次へと次へと
方向を指示していく尊夜。


車はだんだんと、人の気配が遠のく場所へと入っていく。



「ちっ。ここまでか……」



そう言うと、
アイツはそれ以上のデーターを手に入れたいのかキーボードを叩く。


携帯を取り出して何処かに電話をかける。



「お疲れ様です。

 瑠璃垣です、山手山王通ににある
 御社の建物ですが、関係者が閉じ込められた可能性があります。

 立ち入らせて頂いて宜しいですか?」



そうやって言葉を交わした後、アイツは『有難うございました』と
お礼の言葉を紡いだ。



「OK。
 持ち主さんの立ち入り許可は貰った。

 晃穂ちゃんはこの先だな」



そう言うと向き合っていたノーパソを俺に見せた。


画面いっぱいに映し出されているのは、
沢山の防犯カメラの映像。


それぞれの一流企業の名前と共に表示された
映像が次々と日常の風景を映し出していく。