「託実、Taka、祈、ちょっと三人で乗り切れるか?
セッションとか、即興で」
「俺は構わないよ。託実と祈は?」
「俺も異存なし」
「僕も大丈夫ですよ」
「よしっ、んじゃ10分、15分
即興で繋いでくれ」
会場内には、アンコールの拍手と声が響き渡っている。
「俺も行くよ」
そう言って俺自身を奮い立たすように、
ドラムスティックを強く握りしめる。
「紀天、アンタは後。
紀天はそこで、深呼吸。
15分後、予定通りのアンコール一曲目で
オレと紀天も出ます。
それまで時間稼いでください」
「OK」
尊夜が言うと、メンバーたちは
一斉にステージの方に移動していく。
会場から、一際高い声援が響き渡る。
最初に出ていったのは、隆雪らしく
ステージに用意されたピアノの調べが
会場内を包み込む。
そこに祈のギター、託実のベースが重なっていく。
かと思えば、祈とギターと託実のベースだけ。
託実のベースと、祈とTAKAのツインギター。
いつもと違う舞台構成はそれはそれでファンにも受けがいいのか、
新鮮なのか、会場内の盛り上がりは、モニターを通して楽屋にも届いていた。
楽屋に戻った俺は、冷たいスポーツドリンクで水分を補給して
精神を落ち着けようと試みる。
携帯電話を握りしめて、アイツからの連絡を確認するものの
メールはなし。
*
晃穂、どうした?
何処に居る?
会場で姿が見えなくて心配してる。
連絡待ってる
紀天
*
文字を打って送信するも、
アイツからの返信はすぐに入らない。
尊夜の方を見ると尊夜は、
瑠璃垣の一族と連絡を共有しているみたいだった。